心の専門家が心を壊した日──燃え尽き症候群のリアルな体験


これまでの歩み〜なぜ私は「疲れない働き方」の専門家になったのか〜

初めまして。心理セラピストの奥富浩司です。

いきなりですが──
私は、心のケアをするプロでありながら、自分の心を壊した人間です。

今でこそ、多くの方にメンタルケアの方法をお伝えしていますが、
かつての私は瞑想講師として「役割をまっとうしなければ」と自分に鞭を打ち、
満足に休みも取らず限界を超えて働き続けていました。

私が心理セラピストとして職場でのストレス解決に特化することになった理由は、自分自身が「人を支える仕事」で完全に燃え尽きた経験があるからです。

私の燃え尽き体験

30歳で瞑想の世界に入り、以降10年以上にわたって瞑想センターの責任者として多くの人をサポートしてきました。

私自身、瞑想を実践する中で心身の不調がきれいに消え去り、かつてないほど健康になりました。

「瞑想を通して得ることのできた素晴らしい体験をたくさんの人と分かち合いたい!」
そんな思いが原点でした。

しかし現実は、私が思い描いていた理想とは大きく違いました。

「自分が瞑想に取り組むこと」と「人に瞑想を指導すること」は全くの別物で、
日々の現場で起こるのは想定外のことばかり。

会員さんとのやり取りに戸惑い、案内をどうすればいいのかわからない。
元来が内気でコミュニケーション下手の私はマニュアル的な対応に頼るか、
さもなければ頭ごなしに自分の成功体験を押し付けるしかなく、会員さんに心から寄り添うことができない。

自分のやり方に自信が持てず、うまくいかないもどかしさばかりがつのる日々…。

結果として、会員さんやスタッフとぶつかることが増え、自分の周りから人がいなくなっていきました。

しかし、誰かに相談しようにも「自分はメンタルケアの専門家だ」というプライドが邪魔をし、心を開くことができない。

愚痴や弱音、自分の素直な気持ちをどこにも吐き出すこともできないまま、
センター責任者としてのプレッシャーも重なり、次第に私は仕事に対する意欲を失い、無気力になっていきました。

いわゆる燃え尽き症候群です。

燃え尽きからの回復──自分を消耗させていた本当の原因

「心のケアをするはずの自分が、なぜこんなにも疲れ果て、疲弊してしまうのだろう?」

そんな思いを抱えながら、長いトンネルの中を光も見えないまま一人で歩き続けるような日々が数年間続きました。

体は動いても心がまったくついて来ない。何をしても喜びが湧かない。人と接することがとてつもなくしんどい。

周りがすべて灰色に見えるような毎日でした。


燃え尽きて無気力になった私が、一人でそこから立ち直るのにはかなりの時間が必要でした。 

でも、その時間の中で自分自身を深く見つめ直すことで初めて気づけたことがありました。

それは、

すべての悩みは、他者との関係の不調和からではなく、自分自身との関係の不調和から生まれるということでした。


私が疲れ果て燃え尽きた本当の原因。それは「仕事量の多さ」のせいでも「気難しいクライアント」のせいでもありませんでした。

「講師としてこうあるべき」という自分への要求、「弱みを見せてはいけない」というプレッシャー、「相手の問題を解決しなければ」という過剰な責任感…。これらの思い込みが、私を内側から疲弊させていたのです。

そのことに気づいた私は、自分自身との関係を一つずつ修復していきました(幸いにしてそれまで学んできた瞑想法や心理学で得た学びの数々がそのための力を貸してくれました)。

自分の弱さを認めること。 自分の素直な気持ちに耳を傾けること。 

そんな“自分との関係修復”から私の再生は始まりました。

ちなみに実はこのプロセスは、心理学の観点からも非常に意味のあるものとされています。

心理学には「自己一致」という考え方があります。 これは、自分の感情・欲求・価値観を否定せずに認め、外側の行動や表現と一致させていく状態のことです。つまり自分に嘘をついていない心理状態のことです。

人が本当の意味で癒され、変化していくためには、 この自己一致のプロセスが不可欠だと考えられています。

私たちの心と体のバランスの根幹である「自分自身との関係」が健全でなければ、内側だけでなく外側の人間関係にも歪みが生じます。

「自分はこうあるべき」という基準に当てはめて無理やり自分を変えようとするのではなく、ありのままの自分を受容する。

その姿勢こそが、自分との関係を整え、 周囲との人間関係を調和させていく土台になるのです。私が体験してきたことも、まさにこの“自己の再統合”のプロセスでした。

【5】あるがままの自分を認めることの力

自分との関係を癒していくと、不思議なことに少しずつ他者との関係もスムーズなものに変わっていきました。

無理に頑張らなくても、周囲の人と自然体で関われるようになっていったのです。

自分を犠牲にして無理して他者に奉仕する姿勢をやめ、自分の気持ちを尊重するようになると、
瞑想や心理セラピーの持つ力を様々な人のニーズに合わせて柔軟に伝えられるようにもなっていきました。

大切なのは、コミュニケーション能力の有無だとか小手先の対人スキルを身につけることなどではなく、
あるがままの自分を認め、自分らしくいることを自分が自分に許すことだったのです。

そうした心の姿勢の転換はまた、各種瞑想法や心理セラピー、カウンセリングのエッセンスを以前よりもずっと容易に学び取れるようになるという副産物ももたらしてくれました。


苦い経験と回復のプロセスを経て、私なりに辿り着いた結論があります。

それは、
「自分自身を尊重できてこそ、本当の意味で他者を尊重できる」
「自分自身が幸福であってこそ、その幸せを周りの人と分かち合える」
ということです。

これは、多くの失敗を通して得た揺るぎない確信です。

自己犠牲ではなく、自己尊重の姿勢で自分と向き合うこと。

その姿勢は、人生をもっと自由に、もっと豊かにしてくれるものです。

セラピストとして今──自分らしく働けて成果につながる生き方の支援

大切なことは、何かを付け足すことではなく不要なものを取り外して本来の自分に還ること。

自分が人を正しい道に導くというような姿勢ではなく、その人が本来の自分に戻る道を補助すること。

こうしたスタンスから様々な人のセラピーを行なうようになると、その効果はとても大きくなりました。

結果として、クライアントの方々から『問題解決の道筋が見えた』『自分で見つけた答えだから心から納得できる』『人生の見方が変わった』という声をいただけるようになり、私自身も気楽に案内ができるようになったのです。

やがて「誰に遠慮することもなく自由に色々な人の悩みを解消するセラピーを思う存分やってみたい」という思いが、現在の心理セラピーを形づくり、セラピストとして独立する道を後押しすることになりました。

いま私は、心理セラピストとして
「様々な人が自分らしく働けて成果を生み出せる生き方」のためのサポートをライフワークにしています。

12年間の指導経験と自身の燃え尽き・回復体験を通じて確信したことがあります。

真面目で責任感の強い人ほど、実は「楽になる方法」を知らないだけなのです。

適切な方法さえ身につければ、職場での人間関係はもっとシンプルで楽なものになります。そして、あなた自身がより充実した働き方を手に入れることができます。

もしあなたが今、「心がついてこない」「頑張りすぎている気がする」── そんな感覚を抱えているなら、一度お話を聞かせて下さい。

自分との関係を整えることができれば、そこに思ってもみなかった可能性の扉が開くはずです。

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