1on1、相談で消耗する管理職必見 疲れない部下対応”引き算のコミュニケーション”

「田中さんって本当に話しやすいですよね」
「いつも親身に聞いてくれてありがとう」

職場でそんな言葉をかけられるたび、嬉しい反面、胸の奥でこんな感覚を覚えたことはありませんか?

「気がつくと、いつもどこか疲れている」
「部下の相談を聞いたあと、気持ちを切り替えることが難しい」
「チームメンバーのことを考えすぎて、自分のことが後回しになっている」

これは、職場で多くの真面目な管理職・人事担当者が抱える「共感疲労」という見えない消耗です。

共感疲労とは、日々の部下対応や職場コミュニケーションにおいて、相手に共感し続けることで蓄積される心身の疲労状態のこと。
日常的に人の相談を受ける業務に就く人がかかりやすく、特に責任感の強いビジネスパーソンほど、この状態に陥りやすいとされています。

管理職、プロジェクトリーダー、チームのまとめ役——
「人と深く関わる職場の役割」を担う人の多くが、この静かな疲労を抱えています。

目次

私自身の共感疲労体験—1日3件の面談で疲れ果てた日々

家族、進学、就職、仕事、お金、恋愛、結婚、健康、老後の不安、生きがい、人生の意味…。
私はこれまで様々な人の悩みを聞いてきましたが、実は私自身も、瞑想講師としてのキャリアの初期に深刻な共感疲労を経験しました。

当時、店舗責任者として、1日に3人ものクライアント対応をすると、夕方にはぐったりと疲れ果てていました。
家庭のこと、職場のこと、将来への不安など、様々な悩みを抱えた人々の話をマンツーマンで伺っていると、心身ともにクタクタになってしまうのです。時には相談内容の影響から寝込んでしまったこともありました。

「この人を何とか助けなければ」
「もっと良いアドバイスをしなければ」

そんな思いで必死に相談に乗っていましたが、対人コミュニケーションにおける様々な研究・実践を通していくつかの気づきを得たことを境に、人の悩みや苦しみに対する見方が徐々に変わっていきました。

そして、最終的にはどんなに深刻な相談を受けても疲れることがなくなっていったのです。

その気づきとは、わかりやすくいうと、以下のようなものでした。

  • 喜びや感動、希望といったポジティブな感情と同じく、悲しみや不安、怒りといったネガティブな感情にも意味があり、それは否定すべきものではなく、相手が大切にしている価値観をより深く理解する手がかりである
  • どんな心の状態も永続するものはなく、苦しみもずっと続くわけではない。相手が抱えている現在の心の状態だけを見て悲観的な未来を想像するのではなく、その苦しみがその人にどんな学びや恵みをもたらしているかに目を向けることができれば、今ある苦しみもその人を成長させる大きなリソースであることがわかる
  • あらゆる人にはその人自身の中に自分の課題を解決する力があるが、安易なアドバイスや助言はその力を妨害してしまう。なぜ自分がアドバイスをしようとするのか。「相手から認められたい」「尊敬されたい」「自分のパワーを感じたい」などといった利己的な動機がないかチェックし、我欲を脇に置いて相手の話を聞くことが大切である

こうした気づきから生まれたのが、これからご紹介する「引き算のコミュニケーション法」です。

あなたの共感疲労レベルをチェック

以下の項目で、当てはまるものをチェックしてみてください。

□ 同僚の相談を聞いたあと、どっと疲れることが多い
□ 部下や上司の感情に強く引きずられる
□ ときおり、一人になりたくなることがある
□ プライベートでも、話の聞き役になりがち
□ 自分の意見より相手に合わせることが多い
□ 「この人を何とか助けなきゃ」と思う気持ちが強い
□ 職場の問題を自分の責任のように感じてしまう
□ 疲れているのに、休むことに罪悪感がある

これは、私自身の経験や数多くのクライアントの体験を通じて浮かび上がった典型的なサインです。

3つ以上当てはまったなら、あなたの中にすでに共感疲労の兆しがあります。
でも大丈夫。気づいたその瞬間から、疲れない関わり方を身につけることができます。

管理職Aさんの変化—部下対応が劇的に楽になった実例

私自身の気づきを体系化したこの方法は、実際のクライアントにも大きな効果をもたらしてきました。
ここで、私のクライアントの事例をご紹介します(ご本人の許可を得て匿名+事例をアレンジして掲載)。

中堅規模の食品メーカーに勤務する課長職のGさんは、部下10名を抱える営業課の責任者でした。

変化前の状況: 毎日のように部下からの相談があり、一件あたり30分〜1時間はかかっていました。

  • 「○○さんとうまくいかなくて…」(人間関係の悩み)
  • 「営業成績が上がらず落ち込んでいます」(業績への不安)
  • 「転職を考えているのですが…」(キャリアの迷い)

元来仕事熱心なGさんは「部下の悩みを解決してあげなければ」という思いで、自分の経験談を話したり、自己啓発書を読み込んで具体的なアドバイスを与えたりしていました。結果的に夜遅くまで対応することが日常となり、家族からは「最近疲れてるね」と心配される状態でした。

転機: Gさんがセッションで気づいたのは、「部下を助けたい」という気持ちの奥に「頼られる上司でありたい」「尊敬されたい」「上司に自分の指導力を認めさせたい」という自身の承認欲求があったことでした。

こうした欲求はビジネスパーソンなら誰にもあるものかもしれませんが、部下を自分の承認欲求を満たす手段にしてしまうと、いつまでも部下が成長できなくなるばかりか(自身の欲求を満たすためには部下には未熟なままでいてもらう必要があるため)、Gさん自身も本来の業務に集中できず精神的・体力的にも疲弊してしまいます。

セッションではそのことを理解してもらい、承認欲求の根本原因を探り、承認欲求を満たすことに部下を利用する必要がないことを具体的なワークを通してGさんに体感してもらいました。そして引き算のコミュニケーション法を実践するご提案をしました。その結果、以下のような変化が生まれました。

引き算のコミュニケーション法を実践してから3ヶ月後:

「相談時間は半分以下になったのに、むしろ部下の自主性が向上しました。私自身も残業せずに帰宅できるようになり、家族との時間も取り戻せました」(Gさん)

部下からの「同じ相談の繰り返し」も激減。それと共に部下が自分で解決策を見つけてくる頻度が増加したそうです。

以前は「どうしたらいいですか?」と解決策を求めてきていた部下が、「こんな方法を試してみようと思うのですが、どう思いますか?」と自分なりの案を持参するようになったのです。

真面目な管理職ほど陥る「がんばる傾聴」の罠

これまでたくさんの職場の悩みを聞いてきた中で気づいたことがあります。
それは、職場で疲弊する管理職やリーダーの多くが「がんばる傾聴」をしているということです。

現在、日本の多くの組織で、優秀で献身的な管理職が燃え尽きて離職している現実があります。
彼らに共通していると思われるのは、この「がんばる傾聴」のパターンです。

がんばる傾聴の特徴:

  • 部下の悩みを解決してあげようとする
  • 相手の気持ちを完全に理解しようとする
  • 管理職として適切なアドバイスを言わなければと焦る
  • 部下の問題を自分の責任として背負い込む

ビジネスパーソンのための「引き算のコミュニケーション法」

多くの管理職が疲弊する原因は、「足し算の対応」にあります。
解決・共感・助言を“足していく”ことで自分を消耗させてしまうのです。

そこで私が開発したのが、がんばらない、共感しない、正解を探さない「引き算のコミュニケーション法」です。
これは、長年の現場経験から生まれた、職場での疲れない関わり方の実践法です。

1. がんばって解決しようとしない

従来のアプローチ: 「この部下の悩みを何とかしてあげなければ」
引き算のアプローチ: 「この人は自分で答えを見つけられる力を持っている」

部下の問題を解決することがあなたの役割ではありません。
部下が自分で気づき、成長するプロセスを見守ることが、本当のリーダーとしての支援のあり方です。

2. 無理に共感しようとしない

従来のアプローチ: 「部下の気持ちを理解しなければ」
引き算のアプローチ: 「相手の考えや気持ちを完全に理解することはできなくても、尊重することはできる」

そもそも他者の体験を完全に理解することは不可能です。
「わからない」という現実を受け入れることで、かえって相手を尊重した関わりができるようになります。

3. 正しいアドバイスを探さない

従来のアプローチ: 「管理職として何か役立つことを言わなければ」
引き算のアプローチ: 「ただ聞くことが最大の支援である」

部下に「答え」を与えようとしないでください。
その人自らが気づき、解決策を見つけるプロセスに寄り添うことが本当のサポートになり得ます。

管理職・人事担当者が今日から使える具体的実践法

シーン1:部下から人間関係の相談を受けたとき
❌ 従来の管理職対応: 「それは大変ですね。私も以前同じような経験があって…」
⭕ 引き算の管理職対応: 「そうですか。確かにそれは大変ですね。それについてあなた自身はどう感じていますか?」

問題点:「私も以前同じような経験があって…」 → 相手の話から自分の話にすり替えている。部下はまず自分の気持ちを受け止めてほしいのに、管理職の自分語りを聞かされることになってしまう。結果として部下は「この人に相談するのはやめよう」という気持ちになる。

シーン2:チームメンバーの業務上の愚痴を聞いているとき
❌ 従来の管理職対応: 「確かにそれはひどいですね。○○さんがそう感じるのも当然ですね。私も彼の態度には納得できません」
⭕ 引き算の管理職対応: 「話してくれてありがとうございます。今のお話を通して何か見えてきたことはありますか?」

問題点:「確かにそれはひどいですね。私も彼の態度には納得できません」 → 管理職が感情的に同調している。部下の愚痴に一緒になって批判することで、問題解決から遠ざかり、部下は自分自身を見つめ直すことができなくなる。結果として部下は同じ問題にぶつかり続けることになる。

シーン1と2に共通する根本的な問題:どちらも 「部下の成長機会を奪っている」 こと。管理職が自分の話にすり替えたり同調したりすることで、部下が自分で考える機会を奪っています。

なぜ引き算のアプローチが疲れないのか

引き算のコミュニケーション法では、以下の3つの境界線が明確になります。

  1. 責任の境界線:部下の課題は部下のもの、自分の課題は自分のもの
  2. 感情の境界線:相手の感情は相手のもの、自分の感情は自分のもの
  3. 役割の境界線:解決者ではなく、支援者としての立場を守る

この境界線により、部下を尊重しながらも自分のエネルギーを守ることができます。

自分も部下も成長できて楽になる職場コミュニケーションを身につけませんか?

もしあなたが:

  • 職場での人間関係に疲れを感じている
  • もっと疲れない部下対応を身につけたい
  • 自分の性格に合った、自分を守る方法を知りたい

そんなふうに感じているなら、個別セッションであなたの具体的な状況に合わせた「引き算のコミュニケーション法」をお伝えします。

10年以上の現場経験と、1万人との対話から生まれた実践的なアプローチで、職場での疲れない関わり方を一緒に見つけていきましょう。

まずは無料相談で、あなたの職場での具体的な状況をお聞かせください。営業トークは一切いたしませんので、安心してお話しいただけます。

職場ストレス・共感疲労専門の心理セラピスト 奥富浩司


ZOOMセッション無料相談(15分)受付中
※セッション全般に関する疑問やご質問、どのセッションを受けたらよいのかわからないというお問い合わせにお答えします。オーダーメイドのセッションも可能です。


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